“初心忘るべからず”は能の世阿弥が書いた「花鏡」にある言葉です。
 
 『しかれば当流に万能一徳の一句あり。 初心忘るべからず。この句、三ヶ条の口伝あり。
是非初心忘るべからず。時々(ときとき)の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず。
この三、よくよく口伝すべし』
とあり、能に取り組む姿勢を示したものです。

 三つの「初心忘れるべからず」があるとしていますね。

 一つ目の「是非とも初心忘るべからず」は、始めた志をいうのでなく、
最初の芸の未熟さを忘れるなということ。
 二つ目の「時々の初心忘るべからず」は、芸の上達の過程においても、
その時その時に芸に取り組んだ経験を持ち続けることにより、その後の芸の習熟に役に立つということ。
 三つ目の「老後の初心忘るべからず」は、
年老いて芸を極めたと思ったとしても、これ以上の物はないなどということはない。
老いてなお、向上心を持ち高みを目指していかなければならない。それも新たなる“初心”である。ということでしょう。

 どうでしょう。世阿弥がいうところの「初心忘れるべからず」は、
禅師の書にある“人には年齢に応じた初心がある”のことだということがわかりますね。


 さて、今回のご法事の施主である70歳代の方ですが、この法話を聞き、
その後のお斎(会食)のあいさつで、「今日は大変良い話を和尚さんから伺った。
“人には年齢に応じた初心がある”という素晴らしい言葉を覚えた。
私も高齢になるが、意欲的に取り組んでいきたい。励みにもなった。」
という旨のごあいさつをされました。
現在、小学校の記念誌の編集委員長として、
原稿依頼や自らの執筆などなど、仕事をやりながら奔走していらっしゃる方です。
そのような方ですから、この言葉の重みを感じ取ることのできるベースがあって、
特に、心に響いたのだと思います。
 逆に私が刺激をうけました。

 私も、老後までは行かずとも、時々の初心を忘れずにしたいものです。



 ちなみに、この日めくりカレンダーの中に猫と一緒に写っている方が板橋禅師です。
 禅師は、今、瑩山禅師の誕生の地である、福井県の御誕生寺の御住職になっています。
猫好きの禅師で、寺にはたくさんの猫が飼われています。
「猫の寺」ということで、マスコミにもよく取り上げられています。
 来年の永平寺参りの際に、お伺いする予定にしています。参加される方はお楽しみに。
 
 日めくりは本堂の廊下の柱に掛けています。
ほかの日にちもうなる言葉が書かれていますよ。是非ご覧ください。


 その下に鎮座?しているのが、もりわじんさん作の招き猫です。 
 これまたかわいいんですよ。左手を上げているのは、「人を招く」のです。
ご法事などの仏事だけでなく、多くの人にお寺に足を運んでほしいのです。
また、お参りの時も、若い方や子供さん方にもお寺に足を運んでもらいたいからです。

カレンダーや招き猫をも見に来てほしいですね。

 なお、お寺においでになりましたら、
まず最初は、本堂の御本尊さまでありますお釈迦様に手を合わせることが肝心ですよ!

住職合掌

23.人には年齢に応じた
         初心がある
「初心」という言葉を聞くと、
多くの方が「初心忘るべからず」を思い浮かべるようです。

 そして、その意味は
「何事においても、始めた頃の謙虚で真剣な気持ちを
忘れてはならない。」などと
辞書にも書かれていますし、そう覚えていますよね。

とすれば、「タイトルの“人には年齢に応じた初心がある”は、
ちょっとどうなの?」の疑問が生じませんか。

 さて、この写真の文字は、大本山總持寺の元貫主で、
曹洞宗のナンバー1である管長も務められた
板橋興宗禅師が書かれた日めくりカレンダーの
28日のものです。
 
 先日、28日にあるお檀家さんの御祖母様の37回忌の御法要があり、
その際に、「今日のカレンダーの言葉は・・・」ということで
お話をしたのですが、その内容を紹介します。
inserted by FC2 system