19.「 春彼岸 
菩提の種を蒔きましょう 」


お彼岸には、お墓参りが全国的に行われます。
当地方では、3月はお墓はまだ雪の下なので、本堂へ参拝に来られ、
位牌堂(檀家さん各家のお位牌(お厨司)をまつっています)で
ご先祖に手を合わせる方が大勢いらっしゃいます。
以前には、白い丸めた餅やあんこ餅を持参して、
ご本尊のお釈迦様をはじめ堂内の仏様と各家のお位牌にお供えする方が多かったのですが、
最近は、お餅はもちろんですが、お菓子や果物のお供え物が多くなってきましたね。

お彼岸は、ご存知のとおり春と秋の年2回、
春分の日と秋分の日を挟んで7日間のことをいいます。
太陽が真西に沈み、昼と夜の時間が同じといわれます。
仏教では西方浄土といって西に極楽浄土があり、そこに一番近づける日ということなのでしょう。

この彼岸というのはインドにも中国にもない、日本独自の行事だそうです。
古来、日本人は太陽への畏敬の念を持っています。
お天道様(おてんとうさま) の言葉もあるように、太陽を神とします。
元旦に初日の出を拝む光景に違和感を持つ日本人は少ないですね。
この「日」に「願い」を掛けることが「日願(ひがん)」
これが「彼岸」に変わったとの説もあるようです。

「彼岸」は、パーラミターが語源です。
「波羅蜜多(はらみった)」と漢字に直すのですが、見たことのある文字ではありませんか。
「摩訶般若波羅蜜多心経」
般若心経の正式なタイトルの文字ですね。
「彼の岸に渡る」という意味です。
彼の岸とは「仏の世界」。迷いのない安らかな世界です。
その世界で過ごしているような生活ができるよう努力する期間が、
この彼岸の一週間なのです。

『今日彼岸 菩提の種を 蒔く日かな』

菩提とは、菩薩の心です(「菩薩」については、こちらをご覧ください)
お彼岸にあたって、お釈迦様の教えに耳を傾け、どのような生き方をしたらいいのか、
そんなことを思うことができればいいのではないでしょうか。

「えっ、生きている人が自分を見直し、
菩提の種を蒔いて正しい生き方ができるように努力する期間なのに、
なぜお墓やお位牌に参って先祖のご供養をするの?」
こんな疑問も起きますね。

自分を見直すには、素直な心になることが第一歩です。
他人には素直になれても、親や肉親に素直になるのって難しくないですか。
「ありがとうございます」の言葉は他人にはしょっちゅう使っても、
親に「ありがとうございます」はなかなか言えないもんですよ。

親をはじめ、肉親である先祖にありがとうと感謝することが素直な自分になった証拠であり、
そのときに自分を見直せることになるんじゃないでしょうか。

お寺のご本尊に合掌し、お墓やお位牌に合掌し、菩提の種を蒔いてください。
そして時々水を撒いて、きれいな菩提の花を咲かせましょう。

副住職 合掌

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