16.「 同 事 」



今年は1月に入って特に積雪の多い日が続きました。
雪による事故(屋根の雪下ろしでの転落事故など)も例年より多く耳にします。
雪国の冬のあいさつは、雪の状況を話し合うところから始まります。
「毎日よく降るもんだなあ〜」「んだずね〜(そうだね)」てな具合。

豪雪地では雪で隣の家と仲が悪くなるというような話も聞くことがあります。
「隣の屋根の雪が俺の家の方に落ちて来るのに、なにもしようとしない」とか、
「家の前の雪を道路に出して、みんなの迷惑を考えないやつがいる」とか・・・。
豪雪になると誰しも邪魔な雪で精神的にも肉体的にも大変になるんですよね。
それで、隣とも仲が悪くなるということもあるわけです。

しかしながら、大変なことだからこそ、助け合えばご近所との仲がますます良くなる
ということも逆にありますね。苦境の時の助け合いが地域の力になる。

雪が積もると、庫裡(くり)の玄関から県道までを除雪機で除雪をするのですが、
ついでに、近所の老夫婦二人暮しの家の前やゴミ集積所のところを除雪するんです。
頼まれたわけではないんですが、ついでなので・・・。
そうすると、お礼をいわれますね。「ありがとう」って。
そうするとこちらも嬉しくなります。
また、逆に車庫の前の雪を掃ってもらうこともあるんですね。
かえって恐縮してしまうのですが、ありがたいことだと思っています。

神戸の地震や今回の中越地震などの被災地では、
その後の対応、復興を見ると、災難に遭遇したが故に、家族の団結が深まり、
そして地域の結束が生まれたとも言えるのではないでしょうか。
スマトラ沖地震でも、今までにないような世界各国の支援が集まっています。

こういう行為が「同事(どうじ)」というんですね。
見返りを求めるのでなく、相手が大変だろうと思い自然と行動がおこってしまう。
自分と他人の区別をしない。
常に相手の身になって考え行動するという「思いやりの心」を持つことが大切なのです。
生活のすべてをこのように暮らすことは、なかなか難しいものですが、
努力をすればその輪が広がり、こころ安らかに生活ができるはずです。

それには自分から変わる努力が必要であります。
自分も他人も同じ事と思えるように、
小さなことから、お互いにできるだけ努力して行こうではありませんか。


「同事というは不違なり、自にも不違なり、佗にも不違なり、たとえば人間の如来は人間に同ぜるが如し、佗をして自に同ぜしめて後に自をして佗に同ぜしむる道理あるべし、自佗は時に随うて無窮なり、海の水を辞せざるは同事なり、この故に能く水あつまりて海となるなり。」
                                      (修証義 第四章 発願利生)

副住職 合掌

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