14.「 百八つ 」



 百八つと聞くと除夜の鐘を思い出しますが、大晦日、東照寺の梵鐘も毎年午後十一時を過ぎる頃から撞き始めます。
夜中に鳴らすのは年に一度だけ。冷たい空気の中で、一年を振り返り、何かしらすがすがしさを感じながら鳴らしています。

 百八とは、人間の持つ煩悩をその数の鐘の音で打ち払い、清らかな新年を迎えるために撞くと言われています。
 煩悩とは、私たちの心身を苦しめ、煩わす心の働きのことで、
貪(とん、むさぼり)、瞋(じん、いかり)、癡(ち、おろかさ)という三つ(三毒)に集約されます。
この世のすべての悪は、私たちの心の内にあるこの三毒によって引き起こるもので、
心の病を断ち切ることが人々を幸福にする根本なのです。除夜の鐘は、その病んだ心に反省を促すのです。
「反省することによって進歩することができる」のです。

 さて、梵鐘には表面にブツブツしたイボのようなものがあります。
これは「乳(にゅう)」と言って、全部で煩悩の数と同じ百八つです。
どうぞ、おいでの際は、数えてみてください。

 数珠の珠の数も正式には百八つ。
百八を基本として、半分の五十四や三分の一の三十六、四分の一の二十七や、外には四十二、二十一、十四の数もあります。
今は、腕にするものなどもあって、多種多様ですが、
正式な数珠は宗派によって違いがあるので、気をつけて買い求めてください。
先日、百円均一の商店でも見かけビックリしましたが、一生使える良き品を求めたいものです。

 それから、プロ野球などで使われている硬式ボールの縫い目の数が百八つだとか。
いろんなものがあるんですね。
煩悩との関係はなさそうですが・・・。

副住職 合掌

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